ファスティングと断食の違いを知り、最適な方法で心身を整える
- 龍雲寺禅堂スタッフ
- 6月30日
- 読了時間: 5分

はじめに
現代社会では「食べ過ぎ」による体調不良や生活習慣病が蔓延しています。飽食の時代と言われる中で、「食べることを控える」「あえて空腹を作る」という逆説的な健康法――すなわち断食やファスティング――が注目されています。
この記事では、「ファスティング」と「断食」の違いを中心に解説し、心身にやさしい「一日一食断食」という新しいライフスタイルを提案します。また、体験型施設として注目される龍雲寺禅堂などにも触れ、無理なく、心地よく実践できる方法をご紹介します。
ファスティングとは何か
ファスティング(Fasting)は、主に欧米で発展した「食事制限を通じた健康法」です。現代では「間欠的断食(Intermittent Fasting)」として知られ、時間を決めて食事を取るスタイルが主流です。
代表的な方法には以下のようなものがあります:
16:8法:1日のうち16時間は食事をとらず、残り8時間だけ食事を許可する
5:2法:週に5日は通常食、2日は摂取カロリーを抑える
24時間断食:週に1回、完全に食事を断つ
ファスティングは、脂肪燃焼の促進、インスリン感受性の向上、代謝改善、炎症の抑制など、科学的な健康効果が多く報告されています。
✅ 出典:NIH(米国国立衛生研究所)"Intermittent Fasting: Live 'Fast' – Live Longer?"
断食とは何か
断食(だんじき)は、東洋的・宗教的な意味合いを持つ伝統的な健康法です。特に仏教や修験道、ヨガの修行などで長く実践されてきた歴史があります。
断食の本質は単に「食べないこと」ではなく、「内省・浄化・精神の鍛錬」です。
例えば:
仏教では煩悩を静め、悟りに至るための行として断食を行う
修験道では山籠もりと断食によって心身を極限まで追い込む
ヨガでは空腹を通じて内観を深めるための手段として活用
現代の健康法と異なり、断食は精神性や儀礼的意味合いを伴います。
ファスティングと断食の違い
項目 | ファスティング | 断食 |
発祥 | 欧米・近代医療 | 東洋・宗教的実践 |
目的 | 健康増進・美容・生活改善 | 精神修養・内省・宗教修行 |
方法 | 時間制限や低カロリー | 完全断食・少量の精進食 |
実践環境 | 自宅・施設・日常生活 | 宿坊・山中・修行場 |
精神性 | 比較的低い | 高い |
一日一食断食の可能性
現代人の生活スタイルに無理なく取り入れられるのが、**「一日一食断食」**です。
これは、1日のうち1回だけ食事を取り、他の時間は水分補給のみにするスタイルで、次のような利点があります。
消化器官を休める時間が長くなり、内臓疲労の回復に貢献
血糖値の安定、空腹ホルモン(グレリン)の正常化
脳機能の活性化(ケトン体の利用)
睡眠の質向上、便通改善、肌トラブルの減少
特に朝食を抜いて夕食を中心にしたスタイルは、実践者も多く「集中力が上がる」「食べ物のありがたみを再認識できる」といった声も多く聞かれます。
宿坊・断食道場・リトリートの違い
ファスティングや断食をより深く体験する手段として、「滞在型のプログラム」が注目されています。以下、それぞれの違いを簡潔に説明します。
宿坊
寺院に併設された宿泊施設
精進料理・坐禅・朝のお勤めなど仏教体験が中心
基本は断食ではなく菜食中心の宿泊体験
断食道場
食事制限を中心に構成された施設
水断食や酵素断食、発酵食による“腸内洗浄”がテーマ
指導者のもと、健康改善を主眼に置く
リトリート
都市部から離れた自然の中での滞在
ファスティングのほか、ヨガ・瞑想・森林浴・温泉など
総合的なデトックス・再生体験
具体的な体験と実践のヒント
筆者はこれまで「断食体験型宿坊」に複数回参加しています。その中で感じたのは、食事を減らすと心が静まり、時間の流れがゆっくりになるという体験的な効果でした。
初めての断食では、半日〜1日の空腹にさえ不安を感じるものです。しかし、実際にやってみると、「空腹」ではなく「軽さ」を感じます。腸が休まり、脳が冴え、思考がクリアになるのです。
龍雲寺禅堂の紹介
最近では、静岡県浜松市にある龍雲寺禅堂のように、「一日一食の精進料理」と「禅的生活体験」を融合させた宿坊型の断食体験が注目されています。
ここでは、次のようなプログラムが用意されています:
朝と夜に坐禅や法話を行い、精神的な落ち着きを得る
昼に一食のみ、栄養バランスを考えた精進料理を摂る
個室での滞在や自然に囲まれた環境で過ごすことで、生活全体が整う
一日一食断食を「無理なく」「自然体で」始めたい人にとって、非常に理にかなった場所と言えるでしょう。
🔗 詳しくはこちら → 龍雲寺禅堂公式サイト
リスクと注意点
もちろん、断食にはリスクもあります。
リフィーディング症候群
長期断食後に急激に炭水化物を摂ると、電解質バランスが崩れ危険な状態になることがあります。とくに3日以上の完全断食後は、「おかゆ・味噌汁→通常食」への段階的回復が必須です。
適さない人
妊娠中・授乳中の方
高齢者・成長期の子ども
糖尿病・心疾患の持病がある方
摂食障害の既往がある方
このような方は、断食ではなく食事改善や軽いファスティングなどを医師と相談のうえ検討してください。
おわりに
「ファスティング」と「断食」は、それぞれ異なる文化と目的から生まれました。しかし、どちらにも共通するのは「食べることを見直すことで、身体と心を整える」という考え方です。
その中でも、「一日一食断食」は、極端ではなく、継続可能で、しかも健康にも美容にも効果が期待できる、まさに現代に最適な選択肢です。
そして、体験として一歩踏み出したい方には、龍雲寺禅堂のような“やさしい断食”を提供する宿坊もあります。
まずは1日、空腹の時間を過ごしてみることから始めてみませんか?あなたの身体と心が本当に求めている「整い」は、きっとその空腹の先にあるはずです。
参考文献・出典
米国国立衛生研究所(NIH):"Intermittent Fasting: Health Benefits and Risks"
厚生労働省:生活習慣病予防に関する情報サイト
日本断食学会:断食療法の科学的検証(2021)
世界保健機関(WHO):長期的食事制限の報告書
大隅良典著『オートファジー入門』講談社(2017)
Comments