龍雲寺禅堂で行う断食|3年間ほぼ満室が続く理由
- 龍雲寺禅堂スタッフ
- 4月3日
- 読了時間: 5分

龍雲寺禅堂がオープンしてから、気がつけば3年以上が経ちました。
振り返ってみれば、そのほとんどの期間が「ほぼ満室」の状態です。毎週のように「予約が取れませんでした」「またリベンジします」という声をいただくたびに、心苦しい反面、たくさんの方に必要とされていることを実感します。
どうして、断食道場である龍雲寺禅堂が、これほどまでにたくさんの方に選ばれ続けているのでしょうか?
もちろん「一日一食断食の効果」や「禅寺という環境」「丁寧な食事やお部屋の整備」といったわかりやすい理由もありますが、今回は少し違った視点で、私たちが大切にしていることや、実際に滞在された方々の声から見えてきた「続く理由」についてお話ししたいと思います。
飾らない、でも整っているという安心感
私たちが目指しているのは、ホテルのような豪華さや、リゾートスパのような非日常とは、少し違う方向です。龍雲寺禅堂は、700年続く禅寺・龍雲寺の一角にある宿坊であり、そして現代の断食道場として運営されています。
滞在中は、畳敷きの部屋にお布団で休み、一日一食の精進料理をいただき、朝には坐禅やお勤め、日中には写経や香体験などの仏教的プログラムが静かに行われます。全体的にとてもシンプルで、決して派手ではありません。ですが、そのすべてが「今の自分を見つめること」に自然と向かわせてくれる環境だと思います。
一見「普通」に見えるこの空間に、初めて来られた方が「すごく安心した」と言ってくださることがよくあります。きっとそれは、静かで過剰ではないけれど、必要なものはしっかり揃っていて、心も体も“ゆるめられる”空間だからなのだと思います。
日常からのほどよい距離感
ホテルやリゾート施設でのファスティングは、まるで「非日常のご褒美」のようなイメージがあります。それもとても素敵な時間だと思いますが、龍雲寺禅堂では、もっと生活に近い距離感での滞在ができます。
例えば、お部屋には冷暖房・バス・トイレ・浄水器・Wi-Fiが完備されていて、洗濯乾燥機も自由に使えます。作務衣やアメニティも揃っているため、荷物は少なく済みます。多くのリピーターの方が「2回目からはリュック一つで来ました」と笑顔で言ってくださるのが嬉しい瞬間です。
この「暮らすように断食する」という感覚が、多くの方にとっての安心になっているのではないかと感じています。都会のホテルでは得られない、日常と地続きのリトリート。そこに、続けたくなる理由があるのだと思います。
無理をしない断食という選択肢
「断食道場」と聞くと、厳しい修行のようなイメージを持たれる方もいらっしゃいます。でも、私たちが提供しているのは、もっとやわらかく、やさしい断食です。
食事は一日一食ですが、精進料理は見た目も味も豊かで、毎日違うメニューが出ます。断食中でも、空腹に耐えるのではなく、むしろ「食べない時間に気づきがある」ことを大切にしています。
そして、体調や不安がある方には柔軟に対応しています。無理に断食を進めることは決してありません。あくまで「自分と向き合う時間をどう過ごすか」という軸でサポートしています。
一人でも、安心できる場所
リピーターの方の8割近くが女性で、そのほとんどが「一人での参加」です。「最初は不安だったけど、来てみたらすごく落ち着いた」「一人だからこそ、安心して心が開けた」という声をよくいただきます。
また、男性の参加者も2割ほどいらっしゃり、「女性が多い場所だと参加しにくいかも」と心配される方もいますが、禅堂内には男女の区分はなく、皆さんが静かに、そして自然に過ごされています。
人数も平均で14名ほどと、決して多くはありません。適度な距離感と、誰かに見られている感じがしない空間。その“ほどよさ”が、多くの方にとって「ちょうどいい」ようです。
忙しさの合間に、あえて“何もしない”を選ぶ
最近では、ファスティングホテルやワーケーション向けリトリートなど、情報も体験も満載な施設が増えています。でも、私たちは少し違う方向に進んでいます。
「何もしなくていい」「予定がなくてもいい」「体調に合わせて、その日の自分を大切にする」
そんなゆるやかで自由な時間の流れを大切にしているのです。
講座の予定も、天候やお寺の行事によって日々変わります。事前に細かなスケジュールはお伝えしていません。けれど、それがむしろ「流れに任せて過ごす」ことの練習になっているのかもしれません。
予定に追われる日常から離れ、立ち止まる時間。それが、今、多くの方にとって本当に必要な“リトリート”なのではないでしょうか。
自然と「また来たい」と思える場所へ
宿泊施設には、「選ばれる理由」と「続けたくなる理由」があると思います。龍雲寺禅堂は、たぶん後者。派手な広告はなくても、誰かが誰かに伝えたくなるような、そんな場所でありたいと思っています。
3年間ほぼ満室が続いている理由は、予約システムの便利さでも、SNS映えでもなく、「また来たくなる」と思ってもらえる“なにか”があるから。それはきっと、人のあたたかさであり、空間のやさしさであり、無理をしない自分でいられる静けさなのだと思います。
心が疲れたとき、体が重たいとき、予定のない日が少し寂しく感じたとき。ホテルではなく、旅館でもなく、ファスティング施設でもない。そんな時にふと思い出してもらえるような、“戻ってこられる場所”として、これからも丁寧に場を整えていきたいと思います。
いつでも、静かにお待ちしています。
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